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「あるべきようわ」の七字を保つべし

こんにちは。下村 知範(ともき)です。

だいぶブームは過ぎ去った気がしますが、
「ありのまま」という言葉が、某映画の影響もあって
大流行していたのは記憶に新しいですよね。

タイトルは伏せてイニシャルにしておきますが
『Aナと雪の女王』の公開は2013年、2は2019年。
もうそんなに経ったんですか……。
時間の流れの早いこと。

そんな「ありのまま」という言葉が
言い訳のように使われている場面があって釈然としません。

例えば、とてもだらしのない人に対して
「いいのよ。あなたらしく、ありのままで」
と声をかけているような場面。

ダメな部分をも肯定してしまって
「言い訳」と「ありのまま」がごちゃ混ぜです。

「あなたらしく」「ありのままで」などの言葉は、
聞こえが良いだけにそれを逆手にとって
未熟さを是認して努力を怠ったり、
自分を律することの出来ない場合の言い訳になっていたり、
本来の意味とはズレた解釈をして
都合良く使われていることがよくあります。

 

そこで、僕が敬愛している明恵(みょうえ)上人という
鎌倉時代の僧侶を紹介したいと思います。

明恵は、僧侶としてのあり方を問い直し、
厳格にお釈迦様の純粋なる教えを追求した人です。

出しゃばることが嫌いであったため、あまり表には出ず
鎌倉仏教で有名な法然や親鸞、道元、栄西、一遍、日蓮は
教科書にも出てきて有名ですが、明恵はあまり知られていません。
ところが、他の僧や社会との関わりは少ないわけではなく
法然のことを強く批判する本を出版したこともありました。

2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の主人公、北条義時。
その子である泰時は、六波羅探題の在任中に、
明恵が住職を務めていた高山寺へ何度も足を運び、
その教えを受けていました。
御成敗式目には聡明なる泰時の考えだけでなく、
根底には明恵の思想が流れているのかもしれません。

京都の高雄にある神護寺は有名ですが、
その隣に位置する高山寺もなかなか良いですよ。
近くに行くことがあれば、立ち寄ってみることをオススメします。

そんな明恵が、弟子たちに次のような言葉を残していました。
無論、泰時にも話していたことでしょう。

「人は阿留辺畿夜宇和と云う七文字を持(たも)つべきなり。
僧は僧のあるべき様、俗は俗のあるべき様なり。
乃至、帝王は帝王のあるべき様、臣下は臣下のあるべき様なり。
此のあるべき様を背く故に、一切悪しきなり。」
(『栂尾明恵上人遺訓』より)

「阿留辺畿夜宇和」は「あるべきようわ」と読みます。
いわゆる万葉仮名ですね。
現代で言えば、ヤンキー用語の「ヨロシク=夜露死苦」のようなものです。
その七文字だけを万葉仮名にした理由は定かではありませんが、
強調したかったことには間違い無いでしょう。

「ありのままに」は、現状を受け入れ肯定しているのに対し
「あるべきようは?」とは、本来あるべき理想像を問いかけ
「そのものらしさ」を大切にして道を進むことを教えています。
そうでないと、すべて悪い方へ向かうと言っているわけです。

明恵上人には他にも様々な逸話があって大変おもしろいのですが、
その中でも特に有名な「あるべきようは?」の教えをご紹介しました。
興味のある方は、ぜひ他にも調べてみてください。

「あるべきようわ」の七文字は、
僕も座右の銘にして、常に自分自身を戒め
本来あるべき理想の姿を問いかけるようにしています。

そうやって世の中の物事を観ていくと本質を捉えることができて、
徐々に真実の世界が見えてくるかもしれませんね。

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